『短歌の作り方、教えてください』俵万智・一青窈

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短歌の作り方、教えてください
質問者

短歌をつくろうと試みているんだけど、どうしても五七五七七の三十一音に収まらない。どうすれば、自分の思いを定型のリズムに乗せていくことができるのかなあ?

短歌は五七五七七の三十一音ということは理解したけれど、いざ自分で短歌を詠もうとすると、うまく定型のリズムに乗せることができないという人もいると思います。

特に初めてつくる場合や、まだつくり慣れていない場合、どうしても五七五七七にしっくりはまらないということがあるでしょう。

もちろん数をこなすうちにだんだんと定型のリズムは身についていくのですが、それでも早い段階からどういったところに注意して短歌をつくっていけばいいのかを知りたいものです。

今回紹介する、俵万智・一青窈『短歌の作り方、教えてください』は、これから短歌をつくっていこうという人にとって実作面でとても参考になる一冊です。

短歌未経験の一青窈がつくる短歌を、俵万智が添削するという流れで、計15回に及ぶ実作レッスンの様子が収められています。

二人のやりとりから、短歌が改作されていく数多くの具体例に触れることができます。この具体的なやりとりから、よりよい短歌をつくる上で、また短歌を定型のリズムに乗せる上で、大切なことをさまざまに学ぶことができるでしょう。

実作レッスンのほかにゲストを交えての特集もあり、実作に加えて、読みについても理解を深めることができる一冊となっています。

それではおすすめポイントを見ていきましょう。

目次

当書のもくじ

まずは『短歌の作り方、教えてください』のもくじを見てみましょう。

まえがき 一青 窈

対談 俵 万智×一青 窈

往復書簡 実作レッスン①~⑪

  • 第一回 まずは五七五七七に
  • 第二回 楽しみながら推敲を
  • 第三回 日常を詠う
  • 第四回 ポルトガル便り
  • 第五回 名詞止めは一首に一度
  • 第六回 初句ができない
  • 第七回 コミカルな短歌
  • 第八回 定型という皿
  • 第九回 字余りでもオッケー
  • 第十回 駄洒落も立派なことば遊び
  • 第十一回 五七五七七に言葉をカッティング

特別吟行会 俵 万智×一青 窈・ゲスト/穂村 弘

往復書簡 実作レッスン⑫~⑮

  • 第十二回 書かれていないことを伝える方法
  • 第十三回 リハーサルスタジオから短歌
  • 第十四回 リズムの整理、言葉の微調整
  • 第十五回 連作の可能性

題詠歌会 俵 万智×一青 窈・ゲスト/斉藤斎藤

あとがき 俵 万智

当書の主な内容は実作レッスンでえすが、その期間は一年半、レッスンの回数は計15回にのぼります。

そのほかに「対談」「特別吟行会」「題詠歌会」が収録されており、対話を通して学んでいくことのできる内容となっています。

おすすめのポイント

それでは、当書の特長やおすすめのポイントを順番に見ていきます。

往復書簡メールによる創作・改作の過程から、実作のヒントをたくさん得ることができる

当書で取り上げられている実作レッスンは往復書簡のスタイルを取っています。流れは次の通りです。

まず一青窈が短歌数首を、俵万智宛にメールで提出します。俵万智は一青窈の短歌を受けて、それぞれの歌に対して、定型に収めるコツ、言葉の選び方、読者に伝えるための工夫、推敲のポイントなどをアドバイスしていきます。これらアドバイスを受けて、再び一青窈が短歌を改作していきます。

このように一回の往復書簡(一回の実作レッスン)が創作、アドバイス、改作といった順番で進んでいきます。アドバイスと改作は一回もしくは複数回行われます。

例えば、第一回の実作レッスン「まずは五七五七七に」のうちの一首では次のようなやりとりが行われています。少し長くなりますが引用してみましょう。

一青窈が提出した歌。

とんねるずっと眺めしがらがらコンビニの夜食のとぐろ巻き

上の一首に対する俵万智の返信。

とんねるずの「ガラガラ蛇がやってくる」っていう、あの歌が隠しモチーフになってるんですね。「とんねる」「がらがら」「とぐろ」が掛詞として作用しているのが、おもしろかったです。こういう言葉遊びがメインの場合は、五七五七七のリズムはきちっとしたほうがいいと思います。言葉をつかった技を見せるわけですから、まずは定型に収めることをして(これも技のうちなので)、そこから遊びをスタートさせてみてください。

一青窈の改作。

コンビニの灯り届かぬガラ悪のとぐろ巻き巻きトンネル’Sたち

改作に対する俵万智の返信。

意味も風景も、ぐっと鮮明になりましたね。「ガラ悪の」のところが、やや詰め込んだ感じですが、「がらがら」が使えなくなったら「ガラ悪」で、きたか~と感心もしてしまいました。ガラガラ蛇へのこだわりですね。

以上のような感じで実作レッスンは進行していきます。

第一回では一青窈は上の歌以外にも4首提出しており、計5首のやりとりが実施されています。他の歌もそうですが、特に「定型に収める」というところが初期の実作レッスンにおいてポイントとなっています。

このような往復書簡による実作レッスンが15回あり、その中から読者は短歌実作におけるヒントをいろいろと吸収できる構成になっています。

あとがきで、俵万智は次のように述べています。

ある意味、これほど生々しい創作の実況中継はないかもしれません。定型と仲良くなりたい人にとって、たくさんのヒントが、ここには詰まっていることと思います。

あとがき

短歌未経験者とプロ歌人との具体的なやりとりであるからこそ、表面上だけに終わらないさまざまな学びがここにはあります。

ゲストを交えた特別吟行会の様子を楽しみながら、読みを深めることができる

当書の中ほどに、俵万智、一青窈、そしてゲストである穂村弘の3名による「特別吟行会」が収録されています。

吟行とは「詩歌をつくるために、景色のよい所や名所旧跡などに出かけて行くこと」です。今回は3名が東京の本郷を一緒に散策し、その散策を通してそれぞれ短歌を詠みました。

帰ってきてから、吟行で詠んだ短歌を披露し、いい点や感じたことなど意見をいいあうという流れです。この鑑賞を通して「読み」が深められるところも当書のポイントでしょう。

吟行は、みんなが同じ場所へ一緒に行くわけですから、見ているものは大枠では同じ場所となります。しかし、短歌をつくる上でそれぞれが見ているものは全然違うということが、この吟行会を読めばわかるでしょう。

同じ場所へ行ったからといって、みんなが同じところに注目しているわけではないし、同じ歌をつくるわけではないところに、吟行の面白さがあると思います。

このコーナーでは吟行ルートの地図が掲載されていたり、吟行の様子を写した写真がいくつか掲載されていたり、そのときの雰囲気をイメージしやすくなっていて、とてもよいと思います。

ゲストを交えた題詠歌会の様子を楽しみながら、読みを深めることができる

「特別吟行会」と同様に、当書にはもうひとつ特別コーナーが掲載されています。それはゲストの斉藤斎藤を交えての「題詠歌会」です。

題詠とは「あらかじめ決められた題によって詩歌をつくること」です。

今回の題は「初恋」「走る」「冬の朝」の3つです。それぞれの題に対して、一青窈、俵万智、斉藤斎藤の短歌が一首ずつ掲載されており、それぞれの歌に対して、意見交換がされています。

この意見交換がいろいろな気づきがあり、とても参考になります。何より読んでいて楽しいので、楽しみながら短歌の「読み」を深めることができるでしょう。

今回の題詠歌会では、題の言葉をそっくりそのまま一首に組み込む必要はなく、テーマ題的な位置づけで題に沿った歌がつくられていればOKとなっています。

題の言葉を組み込むにしても、テーマとして取り入れるにしても、先に題を決めてから実作すると、今まで自分が考えてもいなかった短歌ができるかもしれません。

何人かが共通の題で短歌を詠めば、さまざまな歌が出てくる面白さがありますし、自分がつくった歌との違いを楽しむことができるでしょう。

往復書簡、吟行会、題詠歌会いずれも会話形式のやりとりで、臨場感をもって読み進めることができる

堅苦しい文章ではなく、会話形式で進んでいくところがとっつきやすく読みやすいところも当書のポイントだと思います。

往復書簡はメールのやりとりそのままの感じですし、吟行会と題詠歌会はそれぞれ3名による会話で進行していくので、その場の雰囲気を味わいながら読み進めていくことができます。

また当書を最初から順番に読まなくても、途中の好きなところから読んでも充分わかる構成になっているので、時間のあるときに気になったところから読んでもいいと思います。

まとめ

『短歌の作り方、教えてください』を読むと得られること

  • 往復書簡メールによる創作・改作の過程から、実作のヒントをたくさん得ることができる
  • ゲストを交えた特別吟行会の様子を楽しみながら、読みを深めることができる
  • ゲストを交えた題詠歌会の様子を楽しみながら、読みを深めることができる
  • 会話形式のやりとりで、臨場感をもって読み進めることができる
  • 好きなところから読み始めることができる

当書は、短歌の実作に焦点を当てた一冊です。特に定型のリズムがつかめていない人にとっては参考になる部分が多く、読むことでいろいろなヒントを得ることができると思います。

実作レッスンは往復書簡の形式で進んでいきますが、この展開はほかの短歌入門本ではあまり見られない形式で新鮮にうつるかもしれません。

また特別コーナーの吟行会、題詠歌会を通して、実作だけでなく、短歌の「読み」も深めることができる一冊となっています。

書籍・著者情報

書籍情報

著者俵 万智 ・ 一青 窈
発行角川学芸出版(角川ソフィア文庫)
発売日2014年1月25日

著者プロフィール

俵 万智

1962年、大阪生まれ。「心の花」所属。1986年、第32回角川短歌賞受賞。第1歌集『サラダ記念日』(河出文庫)はベストセラー。著書は歌集『プーさんの鼻』(文春文庫)、『オレがマリオ』(文藝春秋)、『富士山うたごよみ』(福音館書店)ほか多数。
(当書著者プロフィールより)

一青 窈

1976年、東京生まれ。2002年、シングル「もらい泣き」で歌手デビュー。以降、すべての作品の作詞を手がけ、代表作に「ハナミズキ」など。著書に『明日の言付け』(河出書房新社)、詩集『みんな楽しそう』(ナナロク社)、対談集に『ふむふむのヒトトキ』(メディアファクトリー)がある。
(当書著者プロフィールより)

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