カップ麺啜れば骨の芯までも痺れるだめだもっと喰いたい
堀合昇平『提案前夜』
堀合昇平の第一歌集『提案前夜』(2013年)に収められた一首です。
「シティ・ダイバー」という一連の中の歌ですが、仕事に向き合うひとりの主体が登場します。
ゆっくりと食事を摂る時間もないのでしょうか。夜の食事もカップ麺で簡単に済ませてしまっている様子が浮かんできます。
仕事を通して、あるいは極限まで追い詰められているのかもしれません。そんな中で啜るカップ麺だからこそ、「骨の芯までも痺れる」と感じるのではないでしょうか。
「もっと喰いたい」は、体が欲しているのでしょうか、脳が欲しているのでしょうか。それとも両方が欲しているのでしょうか。
この歌からは、カップ麺を食べることに対するとてもつもない希求のようなものを感じます。単にお腹が空いているからというのではなく、もっと根源的な求めがあふれ出ているようです。
カップ麺を強烈に求める状況というものが背景に立ち現れて、ひとりの主体が輪郭をもって記憶に焼きつく、そんな一首ではないでしょうか。