百円のインスタントのラーメンに卵を一つキムチを添えて
カン・ハンナ『まだまだです』
カン・ハンナの第一歌集『まだまだです』（2019年）に収められた一首です。
昨今の物価高騰により、インスタントラーメンも値上がりを見せ、最近ではカップ麺が百円で買える機会は珍しくなってきました。それでもインスタントラーメン一つは概ね百円というイメージでしょう。
お湯でゆがくタイプと、お湯を注ぐカップ麺タイプとありますが、ここではどちらを指しているのでしょうか。百円というイメージはカップ麺に近いのですが、下句の展開を見るとお湯でゆがくタイプでラーメン鉢に入れて食べるタイプを想像します。
いずれにしても、インスタントラーメンはその名の通り「インスタント」（即席）であることがポイントであり、元々何も具材を追加しなくても食べられるようになっています。特にカップ麺であれば、かやく袋がセットされていることが多く、少量ではあっても具材が入っているケースが一般的です。
ただ、そうはいっても卵や野菜などを追加した方が、ラーメンは美味しくなるでしょう。掲出歌でも「卵」を入れていることが詠われていますが、特徴的なのは「キムチを添えて」です。
インスタントラーメンに卵を入れる人は多いでしょうが、キムチを入れる人はあまりいないのではないでしょうか。そもそもキムチが家にないと入れられませんが、キムチが家にあるときの方が少ないかもしれません。
キムチを入れると少し凝ったインスタントラーメンになるように思います。何も入れないインスタントラーメンをベースとした場合、卵を入れるとワンランクアップのラーメンとなり、卵＋キムチを入れるとツーランクアップくらいのラーメンになるのではないでしょうか。それだけでテンションが上がる気がします。
もちろん作者にとってのキムチは、作者の出身国と関係があり、幼い頃から親しんできたという経緯があり、そこに意味を求めることもできるでしょう。しかし、仮にそうではなかったとしても、インスタントラーメンに卵＋キムチという組み合わせをやってみたいと感じさせてくれる一首であり、「百円のインスタントラーメン」が「百円」に終わらないラーメンに変化したことを届けてくれる歌なのだと感じます。
