問題 – Question
〈世界よりいつも遅れてあるわれを死は花束を抱へて待てり〉という巻頭歌で始まる、西田政史の第二歌集は何?
答えを表示する
解答 – Answer
『スウィート・ホーム』
解説
『スウィート・ホーム』は2017年(平成29年)に出版された、西田政史の第二歌集です。50代に詠まれた作品を中心に347首が収録されています。
西田政史は、穂村弘、加藤治郎、荻原裕幸らとともに90年代前半のニューウェーブ短歌の一翼を担いました。2000年に一旦短歌の世界から離れましたが、2013年から作歌を再開しました。
言葉によって、人も植物もあらゆる現象も、それらの境界を超えようとする歌が印象に残ります。他者および他の対象物との境界を希薄化させることによって、ただの日常に留まらない歌の領域が展開されているように感じます。
ニューウェーブの記号短歌のような特異な歌はほとんどありません。それは、記号を使わずとも読者の心を引っかける歌い方が本歌集に表れているといえるのかもしれません。
『スウィート・ホーム』から五首
もう何も起きない部屋にもう誰も起きないアラーム・クロックがある
ほとばしるわたしの水を流しこみ真摯な溝である日常は
ながいながい休符のやうな蒼穹をだれかのセスナ機が飛んでゆく
たとへば金木犀が姉さんだとしたら誰にでも薫るんだ嫌だな
この国に朽ちるわたしのかけらからそれもいい草花が咲いたら