問題 – Question
〈水中のようにまなこは瞑りたりひかるまひるのあらわとなれば〉という巻頭歌で始まる、伊藤一彦の第一歌集は何?
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解答 – Answer
『瞑鳥記』
解説
『瞑鳥記』は1974年(昭和49年)に出版された、伊藤一彦の第一歌集です。1965年~1972年までに制作された歌が収録されています。
安保闘争が終焉へ向かうという時代背景が、本歌集にも大きく影響を与えています。
歌集名にもある通り、「鳥」が登場する歌が印象的です。「瞑」とは「目をつぶる」という意味ですが、これについて福島泰樹は解説で次のように述べています。
瞑鳥とは、もはや目を瞑る鳥、即睡る鳥ではない。瞑想するために、ではなく、耐えるために瞑鳥は、目をつぶるのだ。
ここで詠われている鳥は、安らかに眠るものではなく、どこか痛々しく耐えなければならないものとして描かれています。時代とどのように向き合うのか、そしてどのように生きるのかという著者の生き様そのものが強く表れているように感じます。
『瞑鳥記』から五首
余光あり 径のほとりに佇ちつくすひとりの胸はぼうぼうとして
鶴の首夕焼けておりどこよりもさびしきものと来し動物園
おとうとよ忘るるなかれ天翔ける鳥たちおもき内蔵もつを
さむきわがことばより鳥のことばもて語りたきかな父への愛は
街を出てきたるばかりのわれの耳に音楽としての夕映えはある