問題 – Question
〈雪山を裂いて列車がゆくようにわたしがわたしの王であること〉という巻頭歌で始まる、安田茜の第一歌集は何?
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解答 – Answer
『結晶質』
解説
『結晶質』は2023年(令和5年)に出版された、安田茜の第一歌集です。2014年(平成26年)から2022年(令和4年)の間につくられた歌が収められています。
2022年(令和4年)、第4回笹井宏之賞の個人賞のひとつ神野紗希賞を受賞した連作「遠くのことや白さについて」も収録されています。
声、まぶた、皮膚など、身体に関する言葉が多く登場する印象がありますが、著者はあとがきで次のように述べています。
身体のどこかが痛むとき、どうしても苦しいとき、一人でいるとふと言葉やフレーズが口からこぼれて、それが作品の一部になることがある。
あとがき
言葉から身体を詠うのではなく、身体の変化から言葉が紡ぎだされることによって、本歌集の歌の一部はつくられているのかもしれません。
他に注目したのは、比喩表現です。安直な喩えではなく、オリジナリティあふれる表現に魅力と驚きを感じます。
『結晶質』から五首
かなしいね人体模型とおそろいの場所に臓器をかかえて秋は
寝返りをうつほどシーツのしわたちはきみのからだに集約されて
レアチーズケーキくずして崖を生む 生かされるとか大袈裟すぎる
さらさらの雨にからだを差し出して仮縫いみたいな顔をしないで
髪に闇なじませながら泣きながら薔薇ばらばらにする夜半がある