問題 – Question
次の歌の【 ① 】に入る言葉は何?
〈【 ① 】まるで空気をみるやうにこちらを向いて思索するのは〉 (沢田英史)
A. ゆるさうか
B. よしたまへ
C. なぜだらう
D. ありがたう
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解答 – Answer
B. よしたまへ
解説
よしたまへまるで空気をみるやうにこちらを向いて思索するのは
掲出歌は、沢田英史の第一歌集『異客』の一連「ルーキー」に収められた一首です。
「思索」とは、物事の道理をたどり、秩序立てて深く考えを進めることを意味します。
誰かが主体の方を見て、思索にふけっている場面でしょう。その相手は思索に夢中で、主体の存在はそれほど意識していないのかもしれません。
ですから主体にとっては、相手が「空気をみるやうに」自分の方を見ていると感じているわけです。
おそらく相手にとっては特に悪気があるわけではないのでしょう。しかし、主体の側から見れば、「まるで空気をみるやうに」見られていることに対して、決して心地いい気分を感じていないということが伝わってきます。
それが初句の「よしたまへ」という表現に凝縮されているのでしょう。
ただし、この歌においての「よしたまへ」はそれほどきつい禁止のような印象はありません。”よせ”という言葉とは違います。この「よしたまへ」はむしろやわらかな感じすら与えてくれるようで、相手の側に寄り添ったいい方ともいえるのではないでしょうか。
決して怒っているわけではありません。本気で止めさせたいのであれば、怒鳴るか、あるいはその場から自分が立ち去ればいいのです。
「よしたまへ」から始まる歌というのは珍しいと思いますが、歴史的仮名遣いの効果もあり、どこか穏やかさの漂う一首で、印象に残ります。