次の歌の【 ① 】に入る言葉は何?
〈ヴィデオ映画終はつたあとに映るあのノイズみたいな【 ① 】がほしい〉 (魚村晋太郎)
A. 資産
B. 身体
C. 病気
D. 休暇
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D. 休暇
ヴィデオ映画終はつたあとに映るあのノイズみたいな休暇がほしい
掲出歌は、魚村晋太郎の第二歌集『花柄』の一連「出頭」に収められた一首です。
ビデオのノイズには、映像のノイズと音声のノイズとがありますが、この歌では「映る」とあることから、映像のノイズを指しているのでしょう。
映画館で見る映画では、映画が終了した後にノイズが入ることはまずありません。同じ映画でもビデオで見るからこそノイズが発生するのであり、掲出歌ではビデオで見たことをはっきりと示し、その特徴を捉えていると思います。
さてこのノイズが比喩として使われているのですが、それがなんと「休暇」の喩として用いられているのです。「ノイズみたいな休暇」とは一体どのような休暇をイメージすればいいのでしょうか。
ノイズとはいってみれば、具体的に何かが映されるわけではなく、不確定なもの、混沌としたものといった印象を受けるのではないでしょうか。つまり「ノイズみたいな休暇」というのは、予定が決まっていない休暇、計画のない休暇、何かを行うためではない休暇といったイメージが浮かんできます。
そのような「休暇」を望むということは、主体の現状として、まともに休暇が取れていないか、あるいは仕事が休みであっても、仕事以外に何かすべきことで埋まっているといったことがあるのではないでしょうか。
「ノイズみたいな」からは決まった事柄をすべて投げ出してしまいたいような感じも受け、予定や計画で埋まった休暇をぶち壊してしまいたい、休暇のための休暇がほしいといった思いが垣間見られるのではないでしょうか。
「ノイズみたいな休暇」という喩えの表現に驚きますが、その奥には、主体にしかわからない「休暇」を望む切実な思いがあるように思え、印象に残る一首です。