問題 – Question
〈押し殺してきた感情が押し花になればいいのに リボンを選ぶ〉という巻頭歌で始まる、田村穂隆の第一歌集は何?
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解答 – Answer
『湖とファルセット』
解説
『湖とファルセット』は2022年(令和4年)に出版された、田村穂隆の第一歌集です。2014年(平成26年)頃から2021年(令和3年)秋頃までの作品が収められています。
栞で内山晶太が「身体への回帰」と題して、本歌集の歌の身体への執着に言及している通り、身体を取り入れた歌、身体そのものを詠んだ歌が多いと感じますし、それが本歌集の特徴ともいえるでしょう。
心も身体も、一瞬で凶暴な形に膨れあがってしまう。
あとがき
あとがきでこのように書かれていますが、この一文は収められた歌の数々の傾向と決して無縁ではないでしょう。詠まれている心も身体も、どこか苦しさを帯びて感じられますが、それは制御できない心と身体へ向き合うことから生まれたものなのかもしれません。
表現面でいえば、言葉の選択が非常に丁寧にされており、安易な言葉で終わらないことで、一首が立ち上がり力をもつところに魅力を感じます。
本歌集にて、2022年(令和4年)に第48回現代歌人集会賞、2023年(令和5年)に第67回現代歌人協会賞を受賞。
『湖とファルセット』から五首
そうか、僕は怒りたかったのだ、ずっと。樹を切り倒すように話した
祖父は父を父はわたしをわたしはわたしを殴って許されてきた
あの人の敬語にすこし香るのが落葉樹だと気付いていれば
白い部屋 あの世にわたしが生まれる日この世をしぼる産道がある
愛であなたを削りつづけた三ヶ月 二度の豪雨にわたしも崩れ
ポチップ