問題 – Question
〈もうみんな大人の顔つき体つき冬のすずめに子供はおらず〉という巻頭歌で始まる、藤島秀憲の第二歌集は何?
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解答 – Answer
『すずめ』
解説
『すずめ』は2013年(平成25年)に出版された、藤島秀憲の第二歌集です。306首が収められています。
父の介護と父の死、恋愛、引越し、就職活動などを背景に、日常に感じた出来事がストレートにまたユーモラスに詠われています。
特に父を介護してきた長い時間が、本歌集の歌に大きな影響を与えていると思います。介護の程度は人それぞれであり、他者が簡単に口を挟むことができないものでしょう。しかし、著者は大変であろう父の介護についてユーモアを交えて歌にしており、歌自体のユニークさは固より、読者も重苦しい気分を引きずらずに読み進めることができる点が本歌集の特徴といえるのではないでしょうか。
また一見ストレートに詠われていると思われるような歌でも、言葉の選択や語順、リズム、表記など細かいところまで注意深く考えて詠まれていると感じます。
集中に次の一首があります。
朝に書き昼には消してしまう歌悲しきことを悲しく詠みぬ
本歌集には、本当は悲しいことを悲しく呼んだ歌も多く含まれているのかもしれませんが、読後感は不思議と悲しいという感じは少なく、心温まるような印象のある一冊です。
2014年、本歌集にて第19回寺山修司短歌賞および芸術選奨新人賞を受賞。
『すずめ』から五首
置時計よりも静かに父がいる春のみぞれのふるゆうまぐれ
ゆるキャラのコバトンくんに戦ける父よ 叩くな 中は人だぞ
夏椿さらさらと咲きお父さんパンツを脱いだらパンツを履こう
クマノミがイソギンチャクにまた隠れあなたを見ればぼくを見ている
幸せな四人家族でありし日をかえりみさする四本の鍵
ポチップ