〈浴室の音声ナビの男声おもたらあかんあかんセクハラ〉という巻頭歌で始まる、吉岡生夫の第八歌集は何?
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『草食獣 第八篇』
『草食獣 第八篇』は2018年(平成30年)に出版された、吉岡生夫の第八歌集です。2010年(平成22年)から2017年(平成29年)までの200首が収録されています。
著者の歌集名はすべて「草食獣」で統一されており、本歌集はその八番目に当たります。
狂歌の研究でも知られる著者ですが、言葉そのものに対する興味や面白さを表現したような歌が特徴的で、読んでいて楽しく、そのような歌に魅力を感じます。
一歩間違えれば、いわゆるおやじギャグのように取られてしまう可能性はありますが、そのぎりぎりの線を巧く詠っているように感じます。それは言葉の面白さと同時にそこから立ちあがる一人のひとの哀愁に似たものを感じるからなのでしょう。だからこそただの言葉遊びに終わらない、実感のこもった歌になっているのだと思います。
また懐かしい歌手やフォークシンガーなどの人名を詠った歌が多く見られるのも本歌集の特徴でしょう。
巻末には、付論として「用語論~文語体短歌から古典語短歌へ、口語短歌から現代語短歌へ~」が掲載されています。さまざまな意味で使われている「文語」と「口語」という用語を整理し、現在混合体が大きな位置を占めている歌壇に対して、目指すべきところを問い直す論考となっています。
『草食獣 第八篇』から五首
定年後の趣味で人気があると聞くソバ打っている打たされている
へんとうせんへんとうできへんめいっぱい扁桃腺を診られています
ページから出ているところ短くてストレスたまる栞紐です
子が孫にお婆ちゃんちというときのおばあちゃんちにいるお爺ちゃん
スーパームーンストロベリームーンハネムーン遠くてもどることもできない
※正式には、吉岡生夫の「吉」は上の横棒が短い漢字。