問題 – Question
次の歌の【 ① 】に入る言葉は何?
〈【 ① 】の子のために買われし苺なり深夜の冷蔵庫開ければ匂う〉 (永田淳)
A. 誕生日
B. 風邪
C. 卒業
D. 帰郷
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解答 – Answer
B. 風邪
解説
風邪の子のために買われし苺なり深夜の冷蔵庫開ければ匂う
掲出歌は、永田淳の第一歌集『1/125秒』の連作「雨からの距離」に収められた一首です。
深夜に、家族はみんな寝静まって、おそらくひとりきりでふと冷蔵庫を開けると、苺が入っていたのに気づきました。自分が買ってきたものではないのですが、風邪の子のために買われた苺であることはすぐにわかったのだと思います。
普段、あまり苺が食卓にのぼることはないのかもしれません。あるいは苺の季節となって今年初めて買われたものかもしれません。とにかくここで詠われている苺は、白米のように日常いつでもある食べ物ではなく、この冷蔵庫にあることが珍しい存在として位置しているのです。
冷蔵庫の扉を開けるとふっと苺の香が漂った深夜ですが、子をもつ父の、静かな時間を感じます。と同時にここには家族の存在が確かに現れているのです。
この苺が自分が買ってきたものではないということは、妻か家族の誰かが買ってきたものなのでしょう。そこから、妻もしくはほかの誰かから、風邪をひいている子に対する思いやりが感じられます。
苺を通して、深夜の静寂、父の視線、そこから家族の関係性が見え、印象に残る一首です。
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