問題 – Question
〈何なすとなき冬の日を青鈍のひかりにゆがむ河口まで来つ〉という巻頭歌で始まる、大辻隆弘の第八歌集は何?
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解答 – Answer
『景徳鎮』
解説
『景徳鎮』は2017年(平成29年)に出版された、大辻隆弘の第八歌集です。2011年(平成23年)から2014年(平成26年)までに詠まれた三百五十余首を収録しています。
歌集名は、名古屋の博物館で見た青磁器が心に残り、中国の青磁器の産地の名称から採られています。
事物をつぶさに観察し、それを丁寧に言葉に落とし込んでいく様がとても鮮やかで、一首一首の輪郭がはっきりとした歌である印象があります。
それゆえ読むたびに新たな認識を植えつけられるような感覚があり、歌を読んでいく喜びにあふれている一冊だと思います。一首一首が言葉を読む喜び、言葉を知る喜びに満ち溢れているようです。
あとがきにも書かれていますが、2013年3月に著者は父の死を経験しています。その前後を詠った歌が本歌集の中核を占めているといってもいいでしょう。父との関係性を丁寧にまた実感を伴って詠われた歌に心惹かれます。
2018年(平成30年)、本歌集にて第29回斎藤茂吉短歌文学賞受賞。
『景徳鎮』から五首
ひややけき泥に足裏を捺しながらあなたどたどし鷺の歩みの
死は可算名詞ではない数ふるを許すことなき無音の広がり
息ひとつ吸ひて一つをほき出だす今日ながらふる父のいのちは
色彩がやがて帰りて来む窓に鳥たちの鳴くこゑは明るむ
夕さりて降りくる雨は芝の上の靄をつらぬきすみやかに降る
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※名字の「辻」の字は、正しくは1点しんにょうです。