問題 – Question
〈きれいな言葉を使ってきれいにしたような町できれいにぼくは育った〉という巻頭歌で始まる、岡野大嗣の第一歌集は何?
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解答 – Answer
『サイレンと犀』
解説
『サイレンと犀』は2014年(平成26年)に出版された、岡野大嗣の第一歌集です。第57回短歌研究新人賞次席となった連作「選択と削除」も収録されています。
現在ではメディアで大活躍の岡野大嗣ですが、この第一歌集は理が先行している作品が多いように感じます。それは決してマイナスという意味ではなく、歌の傾向として筋が通っている歌が随所に見られ、当時の著者の詠い方や対象の捉え方なのだと感じます。
ですから、読んでいてハッと気づかされる場面にしばしば遭遇します。この遭遇によって読み手は新たな認識を獲得することができるでしょう。そして、その認識から自身の視野が広がっていくのです。
登場する歌々は著者が紡ぎ出した世界なのですが、その世界はきっと読み手にも伝わっていくでしょう。読み進めていくとその世界を受けとっているという心地よさがあります。歌を詠む理由、そして歌を読む理由、それは巻末のあとがきに記された次の一節に凝縮されているのかもしれません。
僕はなぜこの歌集を世に送ろうとするのか。それは、千年以上も前の詠み人知らずの歌に心を動かされることがあるように、自分が「忘れたくない」と思った何かを、見知らぬ誰かにも伝えたいという願いからだと思う。
あとがき
『サイレンと犀』から五首
ぼくの背のほうへ電車は傾いて向かいの窓が空だけになる
地下街は地下道になるいつしかにBGMが消えたあたりで
生年と没年結ぶハイフンは短い誰のものも等しく
骨なしのチキンに骨が残っててそれを混入事象と呼ぶ日
レジ上の四分割のモニターのどこにも僕がいなくて不安