問題 – Question
〈気がつけば愛の汀に立っていて昼のカレーを食べながら泣く〉という巻頭歌で始まる、鯨井可菜子の第二歌集は何?
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解答 – Answer
『アップライト』
解説
『アップライト』は2022年(令和4年)に出版された、鯨井可菜子の第二歌集です。296首が収められています。
本人があとがきでも触れているように、家族に関わる歌が多い一冊となっています。特に夫との関係を詠った歌に、その観察眼がよく現れているように感じます。
そして家族の歌は、出版関係の仕事やテレワークなど業務を通して描かれてもいます。日常といえば日常なのですが、単に日常というよりも「生きていくこと」そのものが歌の世界として広がっているのだと思います。
いいかえれば、歌は歌、生活は生活と区別されているのではなく、一冊を通して読むと、詠うことと生きることがどこかでつながっているような感じを受けるのです。そのあたりが本歌集を読む喜びにつながっているのではないでしょうか。
また自身が関わった猫に関する歌も多く詠まれており印象に残ります。
『アップライト』から五首
夕星を箸につまんで永遠に小皿にとっておくさようなら
昼寝する夫の腹に〈馬場あき子自伝〉ゆっくり上下しており
胸郭のへんなところにはまりこむ螺子はあなただ 気持ちをいじる
ふすまを開けてホットケーキを勧めおり電話会議を終えたる君に
手をつけぬままのコメダの豆菓子が発芽するころ会いに行きたい