〈朝があり夕べがありてわが庭に 柿の実にはかに色づき始む〉という巻頭歌で始まる、春日いづみの第五歌集は何?
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『地球見』
『地球見』は2022年(令和4年)に出版された、春日いづみの第五歌集です。2016年(平成28年)から2022年(令和4年)の間に発表された作品を中心に収録されています。
『地球見』とは聞きなれない言葉ですが、あとがきでは次のように述べられています。
いつのまにか人々は、物事を世界的規模で、地球や人類の問題として考えるようになってきたと思います。遠くから地球を見る、その眼差しが求められていると感じます。宇宙へ民間人が行くことも夢ではなくなり、「お月見」のように「地球見」をする時代もいずれ来ることでしょう。
あとがき
地球から月を眺める「お月見」に対して、月あるいは宇宙から地球を眺める行為として「地球見」という言葉が表されています。
歌集のタイトルに関連し、地球、宇宙、天体、自然など、大きな視点で物事を見つめた歌が多く見られます。社会情勢の変化に対して、物事を近くから見るだけでなく、遠くから見ることが重要だという著者の考えが歌にも反映されているのでしょう。
そしてそのような視点をもって自分自身に向けられたとき、自分とは、生きるとは、人生とは、といった問いを含んだ歌が生まれ、それらの歌が特に魅力的に感じます。
他にも、聖書の翻訳や、岩波ホールの閉館に関する連作などが収められている一冊です。
『地球見』から五首
安全はいづこにもなく明日昇る太陽だけが標と思ふ
この度も消去法にて選びたる一生の大事を ねえ、羊雲
夜のくらく窓にちかづく刻のありにはかに灯るわれの内側
ほんたうのわが声わが顔しらぬまま生きてゐるんだ 夜の電車に
絵本には地球見をする家族をり三十年後の月の暮しに