問題 – Question
〈かばん抱きもしくは空気を抱えつつ通勤電車に男ら眠る〉という巻頭歌で始まる、奥村知世の第一歌集は何?
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解答 – Answer
『工場』
解説
『工場』は2021年(令和3年)に出版された、奥村知世の第一歌集です。
歌集名の通り、工場を舞台の中心とした歌集です。肉体を使った工場での仕事が、一冊を通して読み続けられています。読みぶりはストレートであり、技巧を活かすというよりも、できるだけありのままを伝える方法を採択しているようで、一首一首に重さがあります。
また家族を詠んだ歌も本歌集の特徴でしょう。仕事の対極としての家庭でありながら、同時に仕事と家庭が重ね合わされる、いわば同極として詠われてもいます。
仕事も家族もやはり触覚が前面に出ているような歌が特に魅力的だと思います。言葉だけで一首を紡ぐのではなく、一旦身体感覚を通した言葉から本歌集の歌々は生まれていると感じます。
2022年、本歌集にて第28回日本歌人クラブ新人賞を受賞。
『工場』から五首
昼休み防塵マスクのゴムの跡くっきりさせて社食へ向かう
保育園のにおいする子を風呂に入れ家のにおいにさせて眠らす
美しき水の循環 秋雨の朝にオムツを丸めて捨てる
神様のレゴのごとくにコンテナは湾岸地区に積み上げられる
漬け物を社食で多めに食べておくこれから汗をかく午後のため