問題 – Question
〈裏側に張りついているヨーグルト舐めとるときはいつもひとりだ〉という巻頭歌で始まる、木下龍也の第一歌集は何?
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解答 – Answer
『つむじ風、ここにあります』
解説
『つむじ風、ここにあります』は2013年(平成25年)に出版された、木下龍也の第一歌集です。
2023年、いまやメディアで話題の歌人・木下龍也ですが、本歌集が出版されたのは十年も前のことです。
一冊を通して読むと、物事を捉える視点のよさが窺えます。自分自身を詠んだ歌でも、自分の至近距離から自分を見つめるのではなく、一旦他者の位置から自分を見つめており、客観的な視点が生み出す発見が歌に表れているように思います。
ひとつの出来事を丁寧に順を追って詠うことで、日常何気なくやり過ごしてしまう場面を掬いあげている一首に特に惹かれます。
一首一首が映像的であり、その一首で小さな物語を想像してしまいますが、イメージが豊かに広がっていくのも、読んでいてとても心地よいです。
巧いといえば巧く、ある意味手つきが見えるともいえますが、それさえもひとつの型となっているため、それが本歌集の魅力になっているといっていいでしょう。
本歌集は、書肆侃侃房の新鋭短歌シリーズの第一作として刊行されましたが、記念すべき第一作にふさわしい一冊だと感じます。
『つむじ風、ここにあります』から五首
花束を抱えて乗ってきた人のためにみんなでつくる空間
一本の道をゆくとき風は割れ僕の背中で元に戻った
B型の不足を叫ぶ青年が血のいれものとして僕を見る
レジ袋いりませんってつぶやいて今日の役目を終えた声帯
天ぷらになりかけのえびすみませんえびグラタンになってください