〈生きてゆく音を確かに聴きとめて胎児ネームを「コポコポ」にする〉という巻頭歌で始まる、ほんだただよしの第三歌集は何?
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『パパはこんなきもち。~こそだてたんか~』
『パパはこんなきもち。~こそだてたんか~』は2017年(平成29年)に出版された、ほんだただよしの第三歌集です。
本の紹介には「子そだてえほん」とありますが、『禁忌色』『転生の繭』に続く著者三番目の歌集に当たります。
歌集名の通り、子育てに関する短歌を集めた一冊ですが、第一子の妊娠・出産から、第二子の出産、そして二人の成長の様子が歌として収録されています。ほとんどの歌に詞書がつけられており、どういう状況で詠まれた歌かわかるようになっています。
子どもの成長はあっという間で、長いと思っていた時間でさえ、振り返ればとても短く感じてしまうものです。子育てに向き合う場面場面のそのときの感情は貴重なものでしょうが、記録しておかないとその状況や感情はいつか記憶から薄れていきます。
記録の方法として写真や動画などもありますが、そのときの感情を記録するにはこれらより短歌が向いていると思います。貴重な一瞬だからこそ、そのときに詠まれた歌は後で振り返ったとき、当時の感情を再び現在に連れてきてくれることでしょう。
すでに子育てが終わったという人も、これからという人も、そして現在子育て中という人も、子育てがどんなものかわからないという人も、本歌集を読めば何かしら感じるものがある一冊ではないでしょうか。
『パパはこんなきもち。~こそだてたんか~』から五首
陣痛の最中の妻の眼は僕を過ぎて僕にはない時が往く
美しく閉ざされているから何度でも確かめる胸の上下を
足も手もどこに飛んでも受け入れて眠れる「川」の字のあたたかさ
しりとりをしながら帰る今日何をしたのか風と探りを入れて
「パパ先に死ぬの?」「そうだね、でも宇宙エレベーターに乗るまではいる。」