次の歌の【 ① 】に入る言葉は何?
〈すみませんピンクイエロー【 ① 】のため三人でお相手します〉 (木下龍也)
A. 風邪
B. 産休
C. バカンス
D. 退職
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B. 産休
すみませんピンクイエロー産休のため三人でお相手します
掲出歌は、木下龍也の第二歌集『きみを嫌いな奴はクズだよ』の連作「有名税」に収められた一首です。
詞書もないため、この歌だけ見ると何のことをいっているのかつかみづらいのですが、これは特撮テレビ番組である「スーパー戦隊シリーズ」のことをいっているのだと思います。
秘密戦隊ゴレンジャーに始まり、科学戦隊ダイナマン、忍者戦隊カクレンジャーなど、現在も続いている人気の番組です。
戦隊は5人組である場合が多く、各人は色が割り当てられています。赤、青、緑、黄、ピンクや赤、黒、青、黄、ピンクといったパターンが多いでしょう。そして赤、青、緑、黒は男性の俳優が、黄とピンクは女性の俳優が演じるケースが多いようです。
掲出歌の「ピンクイエロー」は、この戦隊シリーズのピンクと黄の演者が「産休」で休んでいる場面を想定して詠っています。5人のうち2人が産休のため、残りの男性3人で敵と戦いますよといっているわけです。
詠われているのが、育休ではなく「産休」であるところにポイントがあるのでしょう。
育休は女性も男性も取得することができますが、産休は女性しか取得することができません。残りの3人の男性は産休を取得したくても取得することはできないのです。
「産休」という言葉の選択から、性別の違いと休暇制度の差の関係性が表れているように感じます。
また昔は育休を取得する男性は少なかったと思いますが、現在は昔と比べてかなり取得する人が増えてきたように思います。仕事だけでなく家庭とのバランスを含めて生活を考えるという人が増えてきたのでしょう。
掲出歌は育休ではなく産休を詠っていますが、戦隊ヒーローという地球を守るために悪と戦う正義の味方が、家庭というある面個人的事情で正義の味方を一時的に休むという設定が、アイロニーを含んでいてとても面白く感じます。
何を優先し、何を優先しないのか、公と私のバランスや優先関係は、時代とともに変わっていくものなのでしょう。
現代社会の変化の一端を、戦隊ヒーローという素材で巧みに表現した一首だと思います。