次の歌の【 ① 】に入る言葉は何?
〈地図で見れば【 ① 】に映える一帯を来てどこまでも続く暗がり〉 (荻原裕幸)
A. ゆふひ
B. ひかり
C. ぶるー
D. みどり
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D. みどり
地図で見ればみどりに映える一帯を来てどこまでも続く暗がり
掲出歌は、荻原裕幸の第六歌集『リリカル・アンドロイド』の連作「誰でもないひと」に収められた一首です。
地図では、森、山、芝生のある公園などはわかりやすいように緑色で色付けされていることが多いでしょう。しかし緑で色付けされた場所が、実際に「緑色」であるかどうかはその場所を訪れてみないとわかりません。
地図上で緑色の場所は、なんとなく実際も緑あふれる場所だと思い込んでしまいます。地図の種類にもよりますが、地図の性格上、地図は正確につくられている場合が多く、色付けも実際の景色に近い色が使われていることが多いと思います。
掲出歌は、地図では「みどり」であった場所にたどり着くと、実際はみどりとはほど遠い「暗がり」が続いていたという一首です。
この歌の暗がりは、光が当たらない樹々の下を指しているのではないでしょうか。地図では、森であれ公園であれ、俯瞰的に上から見た状態で示されます。空から見れば森でも公園でも緑色で示して、実際とイメージとがそれほどかけ離れることはありません。
しかし実際その場所を通るとき、樹々の上ではなく樹々の下を通ることになります。樹々の上から見れば緑でも、樹々の下は陰になって、暗がりになる場合もあり得ます。
地図を見た段階では「みどり」のイメージでふくれていた様子が、実際は「みどり」のイメージとはほど遠かったという落差に、プラスからマイナスに転じるような様子も浮かんできます。
「どこまでも」の一語に、なかなか抜けきらない、暗がりが永遠に続くような、よからぬ世界に迷い込んでいくような、そんな印象も感じさせてくれる一首です。