問題 – Question
〈鰻屋にうなぎの腹の裂かれゐる昼かがやきてクレマチス咲く〉という巻頭歌で始まる、栗木京子の第六歌集は何?
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解答 – Answer
『けむり水晶』
解説
『けむり水晶』は2006年(平成18年)に出版された栗木京子の第六歌集です。2003年夏から2006年春までの作品370首と長歌一篇を収録しています。
歌集名は、歌集掉尾の次の一首から採られました。
たなうらにけむり水晶ころがせりわが五十代まだ初心にて
日常の中から短歌を紡ぎ出すのがとても巧く、多くの人が何となく見ている出来事においても、的確にその本質を捉えていきます。時事問題なども積極的に歌にしています。
また歌に余裕やゆとりが感じられます。それは空間的な奥行きでもあり、自分自身を見つめる際のゆとり、精神的な余裕など、とにかく歌が小さな枠に閉じこもっていない印象を受けます。
ですから、読んでいて楽しく気持ちが晴れ晴れとしてきます。
2007年、本歌集にて第7回山本健吉文学賞、第57回芸術選奨文部科学大臣賞、第41回迢空賞受賞。
『けむり水晶』より五首
蟻よりも大きな雨粒地を打ちて蟻の宇宙は満ちあふれたり
秋雨の降りつづきゐる夜の淵に〈わたくし〉といふ木の実沈めり
大粒の雨降り出して気付きたり空間はああ隙間だらけと
囚はれのフセイン喉をさらすとき世界中から舌圧子迫る
引き出しに大切のもの入れしのち少し開けおく今日は海の日