問題 – Question
次の歌の【 ① 】に入る言葉は何?
〈【 ① 】ってそんなに偉いやつなのか 駅の奥まで濡らす、煙雨は〉 (千種創一)
A. 永遠
B. 時間
C. 命
D. 正夢
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解答 – Answer
A. 永遠
解説
永遠ってそんなに偉いやつなのか 駅の奥まで濡らす、煙雨は
掲出歌は、千種創一の第二歌集『千夜曳獏』の連作「この林を抜けると花の名を一つ覚えている」に収められた一首です。
舞台は駅。煙雨とは煙るように降る雨のことで、霧雨、糠雨などと同義です。煙雨が駅の奥まで濡らしている状況で、「永遠ってそんなに偉いやつなのか」という疑問が湧いてきたのです。
あるいは「駅の奥まで濡らす、煙雨は」は実景ではなく、何かの喩となっているのかもしれません。
いずれにしても、「永遠」というものを疑っています。
多くの場合、永遠であることはよいように捉えられることがあります。しかし本当に永遠であることはよいことなのでしょうか。不老不死、不老長寿など、老いない、死なないとすれば、それは本当に喜ぶべきことなのでしょうか。
限りがあるからこそ、いまこの瞬間が輝くこともあるわけで、たとえば人生が永遠に続くとすれば、人はこれほどいまの瞬間を大切に生きるでしょうか。
上句からは、そのような思いを感じました。掲出歌に登場する「煙雨」も一回性の雨であるからこそ、そこに何らかの意味を感じとるのであって、まさに上句の問いかけを補強する景として、雨の質感までもが伝わってくる一首です。