問題 – Question
〈精神の青葉若葉を揺らしつつ山頂までの下見を終へつ〉という巻頭歌で始まる、大口玲子の第一歌集は何?
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解答 – Answer
『海量』
解説
『海量』は1998年(平成10年)に出版された、大口玲子の第一歌集です。
第44回角川短歌賞を受賞した連作「ナショナリズムの夕立」が収録されています。
著者は日本語教師としての立場から、学生に日本語を教えている際の歌が多く見られます。それらの歌から感じることは学生を注意深く見る視線であり、同時に日本語を教えるという状況を通して、自分自身を注意深く見る視線も感じます。
言葉や日本語そのものはもちろんのこと、そこから文化、国家にまで目を向けています。向けているというよりも、向けざるを得ないといった方が近いかもしれません。
日本語教師として、そして歌人として、どちらも日本語なしには語ることはできませんが、だからこそ日本語と向き合う姿から生まれてくる歌に力強さがあると感じてしまうのではないでしょうか。
1999年、本歌集にて第43回現代歌人協会賞受賞。
『海量』から五首
花瓶のみづ飲みて取り替ふるこの朝われの切り口はいかなる匂ひ
房総へ花摘みにゆきそののちにtきとばさるるやうに別れき
赤とんぼのはねつまむやうに言つてごらん動詞よりわけてゐる君の指
名を呼ばれ「はい」と答ふる学生のそれぞれの母語の梢が匂ふ
つらぬきて沢流るると思ふまで重ねたる胸に螢をつぶす