問題 – Question
〈瓦斯燈を流砂のほとりに植えていき、そうだね、そこを街と呼ぼうか〉という巻頭歌で始まる、千種創一の第一歌集は何?
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解答 – Answer
『砂丘律』
解説
『砂丘律』は2015年に出版された千種創一の第一歌集で、19歳から27歳までに発表された410首が収められています。中東と関わりのある著者ですが、この歌集にはタイトルが表す通り、砂のイメージが背景に広がっています。句読点や一字空けを用いた歌の独特な韻律が魅力的です。
あとがきに「感情を残すということは、それは、ともて畏れるべき行為だ、だから、この歌集が、光の下であなたに何度も読まれて、日焼けして、表紙も折れて、背表紙も割れて、砂のようにぼろぼろになって、いつの日か無になることを願う。」とあります。丁寧に扱わないとページが剝れ落ちてしまうような歌集の装丁は、このあとがきに通じるものなのでしょう。
2016年、第22回日本歌人クラブ新人賞および第9回日本一行詩大賞新人賞受賞。
『砂丘律』より五首
マグカップ落ちてゆくのを見てる人、それは僕で、すでにさびしい顔をしている
紫陽花の こころにけものの道がありそこでいまだに君をみかける
手に負えない白馬のような感情がそっちへ駆けていった、すまない
映像がわるいおかげで虐殺の現場のそれが緋鯉にみえる
屋上であなたが横から見せてきた地図に最初の雨粒は鳴る