問題 – Question
〈渋滞の列にじんじん埋もれゆく砂漠のさそりのごとき自動車〉という巻頭歌で始まる、梅内美華子の第二歌集は何?
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解答 – Answer
『若月祭』
解説
『若月祭』は1999年(平成11年)に出版された、梅内美華子の第二歌集です。20代後半の作品を中心に収録されています。
本歌集の歌を読んでいると、対象との距離感がとてもうまく現れている歌が多いように感じます。時には親しい相手とのとても近い距離が詠われていますし、一方で誰かも遠く離れていたいという歌もあります。この距離感によって、著者の心の在り方、気持ちの揺れが表現されているのです。
ここでの距離感は空間的なものに留まらず、時間的にも距離を感じさせる歌も含みます。対象を丁寧に捉えることで、このような膨らみのある歌の数々が生まれているのではないでしょうか。自然や人工物といった具体的な対象と、距離感とが相まって印象深いとして読み手に届いてきます。
この歌集により、第1回現代短歌新人賞受賞。
『若月祭』から五首
夏の風キリンの首を降りてきて誰からも遠くいたき昼なり
大空のミモザのごとく花火散りわれの歓喜はまた闇に入る
乳房当たらぬように抜け来し雑踏の振り返りたれば秋のまたたき
みつばちが君の肉体を飛ぶような半音階を上がるくちづけ
霧雨の細かき傷のなかをゆく田村町から虎ノ門まで