湯気のたつごはんがあって父がいてあなたにたまに逢えて 生きてる
藤島秀憲『すずめ』
藤島秀憲の第二歌集『すずめ』(2013年)に収められた一首です。
この一首からは、生きていることに対する感謝や喜び、すばらしさが伝わってきます。
「湯気のたつごはん」を食べることができること、「父」が傍にいること、そして「あなた」に逢えること。これらは日々生活する中で、何となく当たり前であるように感じてしまいがちですが、改めて見つめると得がたいことであると同時に、その状況があることにありがたいと感じるものなのではないでしょうか。
ご飯を食べることを当たり前と思わずに、今日もおいしいご飯を食べることができたことに感謝する、このような考え方で生きていくと人生がとても充実してくると思います。
父がいる、あなたに逢えるも同様です。
ご飯が食べられない状況、父がいない状況、あなたに逢えない状況を考えてみればわかりますが、「湯気のたつごはんがあって父がいてあなたにたまに逢えて」は何も当たり前のことではなく、とても恵まれたことなのだと感じるでしょう。
ついつい人はないものに目を向けてしまいますが、本当に大切なことは今あるものに目を向けて生きていくことだと思います。結句の「生きてる」にまさにその思いが凝縮されているのではないでしょうか。
この「生きてる」は単に命をながらえているという意味ではなく、今生きていることに感謝しとても充実した思いをもって生きていることを意味しているでしょう。
何に感謝し、何を大切と思いながら生きていくのか。この一首を読むと、より充実しながら生きていくために必要なことは何なのか、それを改めて考えさせてくれるように思います。
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