人生の歌 #138

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人生の短歌

日めくりをいちまいめくり過去となるそのいちまいを毎日すてる
山科真白『鏡像』

山科真白の第一歌集山科真白(2019年)に収められた一首です。

「日めくり」は毎日めくるタイプのカレンダーで、毎日めくることを楽しいと思うか、煩わしいと思うかで大きく分かれるところでしょう。

私などはめくることをついつい忘れてしまうので、月単位のカレンダーの方が自分には合っていると思っていますが、日めくりには日めくりのよさがあります。

その最も大きな点は、カレンダーをめくるとき、一日一日を実感することができるということではないでしょうか。

月単位の十二枚のカレンダーや、一年すべての日が一枚に収まっているカレンダーは、めくる頻度が少なかったり、めくる必要がないという特徴はありますが、逆に見れば、めくるという動作がない分、日々を意識する機会が少ないともいえます。

掲出歌は、過去になった一枚を翌朝めくって捨てるという場面です。ここで主体は、その一日が「過去」となったことを確かに意識しています。めくるタイミングにおいて、今めくろうとしている日付は過去なのです。

日めくりにおいて「過去」は必要ありませんから、捨てることになるわけですが、そこに何かしら過ぎ去った一日に対する思い入れのようなものが感じられます。何もなさなかった一日だったかもしれませんし、何かを大いに成し遂げた一日かもしれません。いずれにしても、過去を捨てるのです。

日めくりは、購入した時点で一年分がセットされたものであるため、引き算の要素が強いと思います。つまり、年初に365日分があり、日々を重ねるたびに、一枚ずつ減らしていくという行為をするものが日めくりといえるでしょう。ですから、新しい日々が始まるという感じではなく、元々与えられた365日という日々が一日ずつ減っていくというイメージを抱くのではないでしょうか。あらかじめ死期が設定された人生を、残り時間を意識しながら、そこに向かって死ぬ日まで生きていくといった状況に近いかもしれません。

日めくりには、毎日を一日一日足していくといった足し算の要素がないので、どうしても過ぎ去った日に焦点があたり、限られた日数が減っていくという印象が強くなるでしょう。ああ、何もしていないのに今年ももう半分終わってしまったと感じることは多くの人があるかと思いますが、日めくりは過去への焦点の当て方を如実に提示してしまうものなのかもしれません。

「そのいちまいを毎日すてる」とき、大切な時間を失ってしまったような思いに襲われはしないでしょうか。それゆえ日々は貴重な時間なのかもしれませんが、過ぎた日をめくる行為は一日の大切さを気づかせてくれると同時に、やはりどこかで喪失感を覚えてしまいます。

日めくりカレンダーの性質を改めて考えさせられる一首だと感じます。

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