観覧車の歌 #11

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観覧車の短歌

観覧車のぼりゆく午後 簡潔に母と子という単位を乗せて
俵万智『オレがマリオ』

俵万智の第五歌集オレがマリオ(2013年)に収められた一首です。

一般的な観覧車において、一つのゴンドラに乗ることができる人数は、せいぜい四名くらいでしょう。

ひとりで乗ることもあれば、恋人や家族と一緒に乗ることもあるでしょう。誰かと一緒に乗る場合、そこには、自分と誰かという関係性があると捉えることが多いと思います。

しかし、掲出歌では、”自分”と「子」という捉え方ではなく、「母」と「子」として表現されています。このように表現されることによって、自分を中心として相手を見るのではなく、どこか第三者の視点、俯瞰した視点から、ゴンドラ内の二人を見つめているように感じられるのではないでしょうか。

主体自身を離れて、「母」と「子」という関係性が捉えられているでしょう。「簡潔に」という言葉、そして「単位」という語によって、どこか別の視点から見つめられている印象はますます強くなっていくのではないでしょうか。

観覧車に乗っているとき、「母」はどのような思いで「子」を見つめているのでしょうか。あるいは、ゴンドラ内ではあまり会話がなかったのかもしれません。同じ空間に一緒にいる、それだけは確かなことのように思えますが、「母」と「子」の関係性は、「単位」という語に集約されているように、どこか無機質な印象を受けてしまいます。

空を背に回る観覧車のような大きな物体、あるいは大空、果ては宇宙という広大な空間から見てみると、ゴンドラに乗る親子は「母」と「子」という簡潔な単位でしかないのかもしれません。

それをかなしいというつもりはありません。むしろ、観覧車がゆっくりと回る時間において、「母」と「子」は同じ空間を、そして同じ時間を共有していたということは、それだけで素晴らしいことなのではないでしょうか。

簡潔な単位であったとしても、単位と単位のつながりは観覧車を介して途切れずに残り続けている、そんな印象が滲み出ている一首なのではないかと感じます。

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