エレベーターの歌 #9

当ページのリンクには広告が含まれています。
エレベーターの短歌

人あまた乗り合ふ夕べのエレヴェーター桝目の中の鬱の字ほどに
香川ヒサ『テクネー』 (香川ヒサ作品集』より)

香川ヒサの第一歌集テクネー(1990年)に収められた一首です。

エレベーターの箱の内部は限られた空間であるため、積載可能重量や可能人数が示されています。いくら体重が軽い人ばかり集めたとしても、空間の大きさを変えられるわけではないので、ある程度埋まったところで、エレベーターの箱の内部はぎゅうぎゅうになってしまうでしょう。

この歌では、そのような人が埋まった箱の内部の状態を「鬱」の漢字に喩えています。「鬱」という字は画数が多く、四角形の桝目の中に漢字を書いた場合、やはりその枠内をいっぱいに占めているような字です。

人がたくさん乗り合う夕方のエレベーター内部の人の配置は、まさに「鬱」の字のように詰まった状態でしょう。

また同時に、夕方の疲れ切った人々の様子が目に浮かぶようで、それは字面の「鬱」だけでなく、人々の心の内の「鬱」をも表しているといえるでしょう。

「鬱」というたった一字が比喩に使われることで、非常に巧みで的確なイメージが強烈に伝わってきます。

エレベーターの短歌といえば、まずこの一首を思い出す、それくらい印象深い一首です。

エレベーター
エレベーター

♪ みなさまの応援が励みになります ♪


俳句・短歌ランキング

ブログランキング・にほんブログ村へ

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次