鑑賞– appreciation –
一首鑑賞、テーマ別短歌の紹介など、短歌一首一首を取り上げます。
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空白の歌 #12
〈吾のごとき沙よりちさきいきものも空白感は鯨のみこむ〉(渡辺松男『雨る』) -
補色の歌 #12
〈畑道のトマトの膚は日を浴びてみどりと赤のまじり合うころ〉(吉川宏志『鳥の見しもの』) -
人生の歌 #110
〈水飲めばみづのうちよりひと生れてわれとなりにき 水消えにけり〉(川野芽生『Lilith』) -
人生の歌 #109
〈かなしみが或る臨界を過ぎしときひとは笑ふといふ真実は〉(川本浩美『起伏と遠景』) -
傘の歌 #34
〈人よりも傘はもろきをきりぎりに気流みだるる空に差し出づ〉(川野芽生『Lilith』) -
人生の歌 #108
〈われら明日はなに見るならむひたひたと「時」の渚を波打ちつづく〉(雨宮雅子『昼顔の譜』) -
観覧車の歌 #7
〈窓の外には観覧車まわってもまわってもまた来るのがおれだ〉(虫武一俊『羽虫群』) -
人生の歌 #107
〈満月が「たとえ一分一秒も他人のためには使うな」と言う〉(谷村はるか『ドームの骨の隙間の空に』) -
人生の歌 #106
〈約束をしないつもりで生きてきたでもあの人とは約束したい〉(九螺ささら『ゆめのほとり鳥』) -
傘の歌 #33
〈バス停もバスもまぶしい 雨払ふごとく日傘を振つてから乗る〉(石川美南『架空線』) -
傘の歌 #32
〈バーバリーもレノマの傘も役立たぬ 私の中に雨が降るとき〉(大田美和『きらい』) -
パンの歌 #29
〈ハムサンド乱暴に買い発つことを誰にも告げず特急に乗る〉(岡崎裕美子『わたくしが樹木であれば』)