鑑賞– appreciation –
一首鑑賞、テーマ別短歌の紹介など、短歌一首一首を取り上げます。
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人生の歌 #125
〈うしなへば自由になれる きつかけは些細で後はとつぴんしやん、と〉(西橋美保『うはの空』) -
エレベーターの歌 #4
〈滑らかにエレベーターは上下して最後までビルを出ることはない〉(松村正直『駅へ』) -
エレベーターの歌 #3
〈われのみのためにとまりて申訳なけれどエレベーターに身を押し込みぬ〉(吉岡生夫『草食獣 隠棲篇』) -
エレベーターの歌 #2
〈エレベーターわが前へ昇り来るまでを深き縦穴の前に待ちをり〉(田村元『昼の月』) -
観覧車の歌 #11
〈観覧車のぼりゆく午後 簡潔に母と子という単位を乗せて〉(俵万智『オレがマリオ』) -
観覧車の歌 #10
〈まっくろな観覧車がもしあるのならすべてのこいびとたちさようなら〉(安田茜『結晶質』) -
エレベーターの歌 #1
〈中心に死者立つごとく人らみなエレベーターの隅に寄りたり〉(黒瀬珂瀾『空庭』) -
人生の歌 #124
〈これまでの十の幸運十の不運かぞへあげつつ眠りにつかむ〉(小池光『サーベルと燕』) -
無数の歌 #22
〈酢のなかに無数の小さき眼がありてある夜またたきながら殖えゆく〉(河野美砂子『無言歌』) -
人生の歌 #123
〈夕闇に紛れゆくときゐなくてもゐてもゐなくてもよいわれとはなりぬ〉(大室ゆらぎ『夏野』) -
人生の歌 #122
〈耳から生まれ耳に死にゆく人間の途中の耳とふれつつおもふ〉(河野美砂子『無言歌』) -
人生の歌 #121
〈楽になる時はあるときふっとくる あるときふっとはいつやってくる〉(中津昌子『風を残せり』)