ばかだらけです神様と告げ口をする 骨のないパンこんなにうまい
雪舟えま『はーはー姫が彼女の王子たちに出逢うまで』
雪舟えまの第二歌集『はーはー姫が彼女の王子たちに出逢うまで』(2018年)に収められた一首です。
「骨のないパン」とは一体どんなパンでしょうか。
一般的に考えれば、元々パンには骨のようなものはないと思いますが、世界中のどこかのパンには骨のようなもの、あるいは固い何かが入っているパンがあるのかもしれません。
確かにパンにも色々な種類があるため、固いパンから柔らかいパンまで様々です。一番骨のなさそうなパンとして、ロールパンを思い浮かべました。柔らかであり、芯のようなものもあまり感じられないパンだと思うからです。
このように現実にあるパンで自由に想像することはできますが、そもそもこの「骨のないパン」というもの自体が現実世界のものであるとは限りません。
というのもこの短歌は、楯と緑というキャラクターが登場する「♥♥♥♥♥愛しあう王子たち」という一連にあり、現実的日常からは遠いキャラクターの世界における歌だと思うからです。
一連には宇宙規模での物事の捉え方が登場しますし、地球におけるパンの話ではなく、どこか別の星では骨のないパンがあるのかもしれないと想像させてもくれます。もちろん骨のないパンという捉え方自体が、つくられた設定ともいえます。
上句と下句の関係性も、正直うまく捉えかねています。
ただ無理やり関係性を求めすぎるよりも、パンをほおばりながら、神様に告げ口をしている設定というくらいに捉えておいた方がいいのかもしれません。
色々と読めないところは多いのですが、「骨のないパン」という表現がとても気にかかる一首であることは間違いありません。そしてそのパンは「こんなにうまい」のです。
あれこれと考えるよりも、骨のないパンを自由に想像し、それがとてもおいしい状況を思い浮かべるだけでも、この歌に触れた喜びを十分に感じることができるのではないでしょうか。