自転車の歌 #10

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自転車の短歌

自転車のカゴを理想のかたちへと押し戻してるときに轢かれた
小坂井大輔『平和園に帰ろうよ

小坂井大輔の第一歌集平和園に帰ろうよ(2019年)に収められた一首です。

自転車のカゴは、自転車の前方についているケースが多いでしょうが、後ろについている自転車もあります。ここでは、前方についているカゴを指していると捉えておきたいと思います。

自転車は長年使っていると、雨や風にさらされ、経年劣化により、だんだんとカゴのかたちが歪んできたり、錆ついてきたり、壊れてきたりするものです。

この歌は自転車のカゴのかたちに言及していますが、「理想のかたち」の「自転車のカゴ」はどんなかたちなのでしょうか。

新品の自転車を買ったときの自転車のカゴのかたちは整っていますが、主体の思う理想のかたちとは異なるかもしれません。買ったときのカゴのかたちは、あくまでも自転車メーカーが考えている、理想のカゴのかたちであり、使いやすいようには工夫されてはいるでしょうが、万人が考える自転車カゴの理想のかたちと必ずしも一致するものではないでしょう。

そういう意味では、人それぞれに、理想の自転車のカゴのかたちが存在するといっていいかもしれません。

さて、この歌は、そんな理想のかたちにカゴを整形しているときに、車かバイクか自転車か、何かの乗り物に轢かれたという場面が詠われています。

自転車に乗りながら、カゴの凹みが気になって、片手で一部を直していたのでしょうか。それとも、しっかりかたちを整えるために、道路の脇に自転車を停めて直していたのでしょうか。停車していても、サドルに乗りながらだったのでしょうか、あるいは降りていたのでしょうか。場面は色々考えられるでしょう。

単に轢かれるというだけでは状況を説明しただけになりますが、「自転車のカゴを理想のかたちへと押し戻してるとき」に轢かれたというところが、歌に興味深さと奥行きを与えていると思います。

轢かれてかわいそうというよりも、どこか滑稽な主体の姿が浮かんできます。轢かれるという現実はいつ起こってもおかしくなく、むしろ簡単に起こり得るといえるかもしれません。

「理想」という言葉が登場しますが、理想と現実の対比が暗に示されていて、そこにこの歌の魅力があるように感じます。

自転車のカゴのかたちの理想に対して、轢かれてしまうという現実。

カゴのかたちを押し戻すという簡単な作業で「理想」へ近づけるのかと思いきや、やはり現実はそう甘くないということを感じさせてくれる一首ではないでしょうか。

自転車のカゴ
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