問題 – Question
〈望の月真上にあればうつとりと尻尾を出せりネズミモチの木〉という巻頭歌で始まる、小島ゆかりの第五歌集は何?
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解答 – Answer
『希望』
解説
『希望』は2000年(平成12年)に出版された、小島ゆかりの第五歌集です。1998年(平成10年)4月から2000年(平成12年)4月までの作品411首が収録されています。
殊更何かが起こるわけではありませんが、日常を通して事物に対する深いところを見つめる目を感じる歌が多く詠われている印象があります。
とはいえ、使われている言葉が難解なものかといえばそうではありません。あとがきで次のように述べられています。
できるだけ自然な日本語で、できるだけ平明な表現で、できるだけ体になじむリズムで歌を作りたいと思うようになった。
あとがき
歌を表面的なものに終わらせず、より奥深い歌にするために、難解な言葉を用いる必要はなく、むしろ平明な表現を志向する著者の思いが見てとれます。
一方、オノマトペについてはありふれた表現ではなく、独特なオノマトペが度々登場し、読むほどに面白さを感じることができるでしょう。
本歌集においては、特に家族を詠った歌が印象に残りました。
2000年(平成12年)、本歌集にて第5回若山牧水賞受賞。
『希望』から五首
月ひと夜ふた夜満ちつつ厨房にむりッむりッとたまねぎ芽吹く
さうぢやない 心に叫び中年の体重をかけて子の頰打てり
時間がゆつくり過ぎしあのころ手といひ胸といひ幼き者に愛されながら
賢明の石となるより迷妄のまひまひとなれ一生ゆたけし
なめこ汁どろりとすすり霧の夜のふかいふかあい暗愚のこころ
ポチップ