問題 – Question
〈バス停に出入国審査官おり去年より厳つい肩をして〉という巻頭歌で始まる、中沢直人の第一歌集は何?
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解答 – Answer
『極圏の光』
解説
『極圏の光』は2009年(平成21年)に出版された、中沢直人の第一歌集です。1999年(平成11年)から2008年(平成20年)までの作品396首が収められています。2003年に第14回歌壇賞を受賞した作品「極圏の光」も含んでいます。
あとがきで「違和」という語が二回出てきますが、本歌集に収められた歌は、その「違和」がきっかけとなり生まれたものが多いのではないでしょうか。
法学を学び、憲法学者でもある著者ですが、これらに関わる歌の他、日常、学校、また恋愛を想像させる歌などが詠われています。
それらは場面や関係性であって、いずれの場面や関係性においても、やはり自分自身を見つめている視線を歌々から感じます。それは世の中に対する違和、事象に対する違和、他者に対する違和などとともに、自分自身に対する違和といったものが少なからず影響しているのかもしれません。
具体的背景や場面が見えない、あるいはあえて見せない歌も見られますが、そのような歌も含めて一首一首立ち止まりながら味わいたい一冊です。
2010年(平成22年)、本歌集にて第16回日本歌人クラブ新人賞受賞。
『極圏の光』から五首
ろうすくう、ろうすくうると啼きながら飛び立つ鳩の群れに混じりぬ
九条は好きださりながら降りだせばそれぞれの傘ひらく寂しさ
逃したいような気がする終電にだらだら急ぐ必要がある
もみあげのない胸像に見下ろされしんねりと録られる心電図
ジンクスを気にしつつ乗るスワンボート 微妙な位置に当分はいる