問題 – Question
次の歌の【 ① 】に入る言葉は何?
〈公園のベンチはぬるく【 ① 】のような時間をつぶす〉 (鈴木加成太)
A. うたた寝の曇り
B. 日盛りの薄荷
C. 軟膏の粘り
D. 値下がりの苺
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解答 – Answer
D. 値下がりの苺
解説
公園のベンチはぬるく値下がりの苺のような時間をつぶす
掲出歌は、鈴木加成太の第一歌集『うすがみの銀河』の一連「革靴とスニーカー」に収められた一首です。
「公園のベンチ」が設置される理由は何でしょうか。
休憩場所というのがその最たる理由のように思いますが、それ以上に「時間をつぶす」のに相当適した場所として活用されることも多々あるのではないでしょうか。
掲出歌はまさに「公園のベンチ」で「時間をつぶす」場面が詠われています。
ちょっとした空き時間ができたとき、喫茶店に入るほどではないのだけれど少し時間をつぶしたいと思った場合、公園のベンチはその時間を受け入れてくれるでしょう。
「値下がりの苺のような時間」という比喩が独特だと感じます。「値下がりの苺」とは、店頭に並んだばかりのころにもっていた瑞々しさが失われていった状態の苺を指すのだと思います。
輪郭が溶けだすような、締まりのない苺の感じが、「ぬるく」という言葉とよく響き合っていると思います。この「ぬるく」という語があるかないかで、歌の印象が大きく変わってきます。この歌では、公園のベンチのぬるさと、値下がりの苺のぬるさとを「ぬるく」がうまくつなげる役割を果たしているのではないでしょうか。
そして時間をつぶしている主体までもが「ぬるく」に飲み込まれていってしまいそうなイメージが表れてきます。
「値下がりの苺」という喩えがとても印象的な、忘れがたい一首です。