問題 – Question
〈鉛筆がひろげし紙にぐっすりと眠るほとりを立ちて来にけり〉という巻頭歌で始まる、岡部桂一郎の第四歌集は何?
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解答 – Answer
『一点鐘』
解説
『一点鐘』は2002年(平成14年)に出版された、岡部桂一郎の第四歌集です。
歌は一首一首が屹立しており、歌のひとつひとつに見どころ、読みどころが存在しているように感じます。
また著者の歌歴や年齢にも関係しているのでしょうが、一首一首がせこせことしておらず、非常に余裕をもった歌が数多く見られます。円熟の歌というような趣きです。
そして対象を見つめる目にも独特なものを感じます。特に人ではない物に対して、ある感情をもたせるのが巧いと思います。それは決して突拍子もない表現ではなく、読み手に納得感をもたらす詠いぶりです。このような歌が味わえるところに本歌集を読む喜びがあるのだと思います。
2003年(平成15年)、本歌集にて第37回迢空賞および第18回詩歌文学館賞。
『一点鐘』から五首
方円の器に水は従いてすなわち満ちぬ秋の光に
目薬のつめたき雫したたれば心に開く菖蒲むらさき
みずからを厭うこころの自堕落を食べおり今宵とろろこんぶを
バラの枝焚きて立ちたるうす煙やや考えて道に出てゆく
休まんと体の影の近づけば木製の椅子緊張をせり