問題 – Question
次の歌の【 ① 】に入る言葉は何?
〈【 ① 】を考えた人のさびしさを思えばボタンかけ違えている〉 (櫻井朋子)
A. 蝶ネクタイ
B. 七分袖
C. カフスボタン
D. タンレザー
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解答 – Answer
B. 七分袖
解説
七分袖を考えた人のさびしさを思えばボタンかけ違えている
掲出歌は、櫻井朋子の第一歌集『ねむりたりない』の連作「だれかの福音」に収められた一首です。
半袖でもなく、長袖でもない七分袖。七分袖は、長袖の七分までの丈しかない袖のことです。手首が見えるため、長袖よりはすっきりとした印象になり、七分袖Tシャツなどは着やせの効果が期待できるようです。
そんな七分袖を考案した人のその考えを、さびしいと詠っています。
「七分袖」、そして「考えた人のさびしさ」に思いを馳せるとき、知らぬ間にボタンをかけ違えているのです。ボタンをかけ違えるという行為に、思いを寄せるやさしさと柔らかさを感じます。
さて、七分袖に目をやれば、半袖にも長袖にもなれなかった、中間地点としての七分袖という存在は、どこかはぐれ者のような印象を受けます。それは服飾の話ですが、もう少し視野を広げてみれば、何も物だけではなく、動物、植物、あるいは人間といった命あるものの中間地点、そしてその両極の存在、いうなれば所属やグループ、階層、格差、好悪といったものまで想像することは難しくないでしょう。
助詞については、二回現れる「を」が少しうるさく気になるといえば気になりますし、気にならないといえば気にならない、何とも微妙なラインの使い方ではないでしょうか。
今後、七分袖を着る機会が訪れるとすれば、そのときにこそ七分袖を考えた人のさびしさに、少し近づけるのかもしれません。