問題 – Question
〈目を閉じた人から順に夏になる光の中で君に出会った〉という巻頭歌で始まる、木下侑介の第一歌集は何?
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解答 – Answer
『君が走っていったんだろう』
解説
『君が走っていったんだろう』は2021年(令和3年)に出版された、木下侑介の第一歌集です。152首が収録されています。
歌集名は、次の一首から採られています。
いっせいに飛び立った鳥 あの夏の君が走っていったんだろう
「いつ見ても今が見えない」
巻末の解説で、千葉聡がこの歌を取り上げ、「失われたものへの感傷」と述べています。
この歌も含めて、本歌集において過去の時間を感じる歌が多くあるように思います。それは未練なのか、懐かしさなのか、逃避なのか、美化なのか、訣別なのか、さまざまな思いが入り混じった結果、一首一首に結実しているのではないでしょうか。
歌から感じる時間のベクトルは、過去へ一旦向かいますが、そこからある種の明るさをもって、未来へと向き直ってくるように感じます。
そこには「君」や「あなた」が登場しますが、その存在が、ベクトルを過去だけに留まらせないように作用しているのかもしれません。
君やあなたとの関わりを詠んだ歌に特に惹かれます。
本歌集に収録されている歌の数は、一冊の平均的な歌数よりも少ないですが、その分一首一首とじっくり向き合うことができるでしょう。
『君が走っていったんだろう』から五首
目を閉じる度に光が死ぬことや目を開ける度闇が死ぬこと
夏の朝 体育館のキュッキュッが小さな鳥になるまで君と
もし俺が宇宙人でも取り敢えずいい人止まりで終わるだろうな
微笑みと同じはやさでほぐれてく花びら 君は私の水面
好きでしたですがでしたになるまでの日々をあなたに聞いてほしいな
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