問題 – Question
次の歌の【 ① 】に入る言葉は何?
〈パトカーを見かけた途端ふたりして無口になって【 ① 】〉 (島楓果)
A. 沈黙と化す
B. 首が固まる
C. 座高が伸びる
D. 透明に似る
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解答 – Answer
C. 座高が伸びる
解説
パトカーを見かけた途端ふたりして無口になって座高が伸びる
掲出歌は、島楓果の第一歌集『すべてのものは優しさをもつ』の連作「【2】しっぽをくれる」に収められた一首です。
車に乗っている場面でしょう。自分が運転しているか、相手が運転しているか、明記されてはいませんが、パトカーを見かけたところを詠っています。
ただ単に車を運転しているだけで、特に悪いことはしていないのに、パトカーを見かけると身が引き締まるのはなぜでしょう。こちらからパトカーを捕まえる力はなくても、パトカー側からはいつでもわれわれを捕まえることができるという非対称性がそうさせているのかもしれません。
さてその場面を、この歌では「無口になって」「座高が伸びる」と表現しています。身長と同じく、座高は急に伸びたりしませんが、背中がやや丸まった姿勢が正されていく様子を「座高が伸びる」という表現で示した点が面白く感じます。この七音だけで背筋がシュッと伸びたことが映像として読み手に伝わってくるでしょう。
この歌の結句が「背筋が伸びる」であった場合と比較すれば、この一首の面白さとイメージの広がりがより際立って感じられるのではないでしょうか。