問題 – Question
次の歌の【 ① 】に入る言葉は何?
〈広い歩道が立派な道に木漏れ日が降ってきてマンションの【 ① 】みたいだ〉 (鈴木ちはね)
A. 街灯
B. 倒立
C. 心臓
D. 広告
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解答 – Answer
D. 広告
解説
広い歩道が立派な道に木漏れ日が降ってきてマンションの広告みたいだ
掲出歌は、鈴木ちはねの第一歌集『予言』の連作「失業給付」に収められた一首です。
広い歩道のある道に、木漏れ日が差している様子を見ている光景だと思います。
木漏れ日が差している道が美しく、それはまるでマンションの広告のようだというのです。
マンションの広告というのは、やはり多くの入居者を集める必要がありますから、掲載されている写真も加工され、購買意欲を掻き立てるような仕上がりになっているものが多いでしょう。
さて、実際の光景と、加工された広告と一体どちらが美しく感じるのでしょうか。広告というのは手が加えられている分、実際の光景とは異なります。実際の光景に勝るものはないという考えがありますが、場合によっては加工されたものの方に惹きつけられるということはあるでしょう。
掲出歌では、実際の光景を目の前で見ているのにも関わらず、その光景をマンションの広告みたいだと捉えなおしているのです。ここにねじれのようなものを感じます。
実際の光景があって、二次的なものとして広告が生まれる順番であるはずなのに、先に広告ありきで実際の光景が認識されている点に、現代の情報社会の弊害のようなものを感じずにはいられません。
ものを見る、ものを感じる、ものを捉えるとはどういうことなのかを考えさせられる一首です。