問題 – Question
〈夜の底映したような静けさをたたえて冬のプールは眠る〉という巻頭歌で始まる、伊波真人の第一歌集は何?
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解答 – Answer
『ナイトフライト』
解説
『ナイトフライト』は2017年(平成29年)に出版された、伊波真人の第一歌集です。第59回角川短歌賞を受賞した連作「冬の星図」が巻頭に収録されています。
本歌集には、天文やカメラに関する歌が多く見られます。
著者が見つめているのは、今ここにある現実に加え、遠くの宇宙にまで届く永遠に近い不変的なものなのかもしれません。
また映画制作の経験があったり、写真撮影を行っている著者ですが、事物の捉え方がファインダーを通した捉え方のような特徴があると感じます。どこか第三者的な視点というか、外側からの視点、撮影する側の視点のように詠われた歌が多くあります。
そのような視点は、目の前の事柄から宇宙の果てまで、変わらずに徹底された視点なのでしょう。
日常を新たなフレームで捉えなおしてくれる、そして捉えなおされた日常を読み手に届けてくれる、そんな一冊だと感じます。
『ナイトフライト』から五首
「惑星を発見したい」と抱きあげる望遠鏡の長さは遠さ
うさぎ座の淡いひかりを見つめつつ人のからだは端から冷える
写真科の実習棟の窓辺から陽が差し僕ら感光してる
日常にゆっくり変わっていく日々を快速列車の窓越しに見る
ロケバスの窓から見ればあらすじのように景色は省略される