問題 – Question
次の歌の【 ① 】に入る言葉は何?
〈ペン立てに見慣れぬ【 ① 】がありいまだ書かれぬ文字をいざなふ〉 (林和清)
A. 春の枝
B. 夏の石
C. 秋の錐
D. 冬の房
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解答 – Answer
A. 春の枝
解説
ペン立てに見慣れぬ【 ① 】がありいまだ書かれぬ文字をいざなふ
掲出歌は、林和清の第四歌集『去年マリエンバードで』の連作「荒らかな季の風に揉まれて」に収められた一首です。
ペン立ては、ペンや鉛筆を立てるためのものですが、時にはさまざまなものが立てられることがあります。大抵は鋏や定規といった文房具の類ですが、耳かきなどといったものも立てられることがあるでしょう。
この歌では、「春の枝」が立てられているのです。ペン立てに入るくらいですから、それほど大きな枝ではないでしょう。
しかし一体誰がこの枝を立てたのでしょうか。「見慣れぬ春の枝」がペン立てにあるというだけで、日常から少し離れた不思議な空間を感じさせてくれます。
それは決して嫌な空間ではなく、春という季節とも相まってとても心地よい空間です。春の枝があるところから、「文字がいざな」われていくという展開も大変興味深く感じます。
春という季節の穏やかで前向きなイメージが、何ともいえぬ味わいをもって読み手に伝わってくるところがとても魅力的です。
「ペン立て」と「春の枝」という組み合わせから新たな世界を想像させてくれる、言葉の豊かさに満ちた一首だと思います。