次の歌の【 ① 】に入る言葉は何?
〈【 ① 】が夜を創ってくれるからわたしがそれを本物にする〉 (鈴木晴香)
A. 神様
B. 風下
C. 果樹園
D. カーテン
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D. カーテン
カーテンが夜を創ってくれるからわたしがそれを本物にする
掲出歌は、鈴木晴香の第二歌集『心がめあて』の連作「書かれることのなかった手紙」に収められた一首です。
夜をつくるものは何でしょうか。通常「夜」といった場合、時間帯が夜の時間になれば「夜」は訪れます。
しかしここで詠われている「夜」は、時間がくれば訪れる「夜」を指しているだけではないようです。なぜなら「夜」を創るのは「カーテン」といっているからです。
昼間開けていたカーテンを夜の時間帯になると閉める、その閉めるという行為によって、窓に掛かるカーテンは夜を創る装置として機能するのかもしれません。
そしてカーテンによって創られた夜を「わたし」が本物の夜に仕上げていくというのです。夜というものの定義が揺さぶられるように感じます。
夜の定義に関していえば、別の一連に次の歌があります。
言いくるめられているだけ訪れる夜の定義は暗さではなく
一般的に想像する時間帯や暗さといったものでは「夜」は定義づけできないという考えが、この歌からも窺い知ることができます。
掲出歌に戻りましょう。夜というのは、家の外側にあるのでしょうか、それとも内側にあるのでしょうか。外側と内側の境界にカーテンは存在するようです。カーテンが創った夜は「わたし」のいる方にやってくるのかもしれません。「わたし」が家の中にいれば、カーテンの内側に「夜」が訪れるのでしょう。
その夜は「わたし」によって本物になるのですが、考えれば考えるほど夜というものがよくわからなくなってきます。しかし、「夜」と「わたし」が密接につながっていることはこの一首から充分に伝わってきますし、「わたし」なくして本物の夜は存在しえないということが深く心に残る一首です。