問題 – Question
次の歌の【 ① 】に入る言葉は何?
〈死ぬときは【 ① 】で死のうと決めている最後ぐらいは伝統守る〉 (松木秀)
A. 薬
B. 歌
C. 餅
D. 家
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解答 – Answer
C. 餅
解説
死ぬときは餅で死のうと決めている最後ぐらいは伝統守る
掲出歌は、松木秀の第一歌集『5メートルほどの果てしなさ』の連作「希望」に収められた一首です。
自分の死に方を決めている人間は、この世にいったい何人いるでしょうか。
死というものは突然訪れるものであり、通常コントロールできないものです。病気で死ぬ場合もあれば、事故で死ぬ場合もありますし、災害に巻き込まれる場合もあるでしょう。また天寿を全うする場合もあります。
あるいは自死を選べば、その死に方を決めることはできるのかもしれません。
しかし死に方というものは不確定要素によるところが多く、通常何となく思い浮かべることはあっても、はっきり決める類のものでもないように思います。
さて掲出歌は「死ぬときは餅で死のうと決めている」と詠っています。餅といえば、正月に高齢者が餅を喉につめて亡くなるというニュースが浮かんできます。
餅で死ぬことは伝統であるといいきっているのですが、これはそれほど深刻なスタンスではなく、このように詠うことで、面白みを出すことに成功している一首となっているでしょう。
「最後ぐらいは」のあたりに、生きてきたこれまでも伝統というものから距離を置いてきたし、またこれから死ぬまでの時間でも伝統に寄り添うことはないという状況が漂います。
最後に伝統を守るかどうかも怪しいのですが、その怪しさも含めて軽妙な味わいを楽しむことができる一首です。