問題 – Question
〈風の夜初めて火をみる猫の目の君がかぶりを振る十二月〉という巻頭歌で始まる、穂村弘の第一歌集は何?
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解答 – Answer
『シンジケート』
解説
『シンジケート』は1990年(平成2年)に出版された、穂村弘の第一歌集です。
穂村弘の鮮烈なデビューを飾った伝説の歌集で、2021年5月に新装版が刊行されました。
現在は評論、エッセイ、絵本、翻訳など、短歌のみならず幅広い分野で活躍している著者ですが、その原点といえる一冊です。
鉤括弧をもちいた発言や対話を含む歌が引用されることが多いように思いますが、一方で端正なつくりとなっている歌も見られます。仮に作者名を伏せれば、本歌集には同じ作者がつくったとは一見思えないような歌が収められており、幅の広さを感じます。
また色彩の豊かさも感じる一冊です。意識的に色や季節(月)を詠み込んでいるのでしょうが、言葉の喚起力によって歌のイメージが色彩を伴って鮮やかに展開されます。
本歌集は、作家である高橋源一郎に「俵万智が三百万部売れたのなら、この歌集は三億冊売れてもおかしくないのに」と評されるほどの一冊で、短歌界に大きな刺激を与えました。
『シンジケート』から五首
郵便配達夫の髪整えるくし使いドアのレンズにふくらむ四月
体温計くわえて窓に額つけ「ゆひら」とさわぐ雪のことかよ
子供よりシンジケートをつくろうよ「窓に向かって手をあげなさい」
水滴のひとつひとつが月の檻レインコートの肩を抱けば
「酔ってるの?あたしが誰かわかってる?」「ブーフーウーのウーじゃないかな」