問題 – Question
次の歌の【 ① 】に入る言葉は何?
〈【 ① 】の重さを知っているひとだ 心のほかは何も見せない〉 (大森静佳)
A. 紫陽花
B. 留鳥
C. 洞窟
D. 掌
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解答 – Answer
A. 紫陽花
解説
紫陽花の重さを知っているひとだ 心のほかは何も見せない
掲出歌は、大森静佳の第二歌集『カミーユ』の連作「わたしだって木だ」に収められた一首です。
「紫陽花の重さを知」るとはいったいどのようなことなのでしょうか。通常、紫陽花を見て色の鮮やかさを眺めることはあっても、重さについてはあまり思考は及びません。
紫陽花は軽いのか、重いのか。それは一概にいえるものではなく、晴れや雨といった気候に影響されやすい紫陽花の色の変化によって、軽くもなれば重くもなるのでしょう。ここに登場する「ひと」は、そのような紫陽花の微妙な変化を捉えることができるひと、もっといえば、そのひと自身が紫陽花の微妙な変化と同じように揺れやすく繊細なひとなのかもしれません。
「心のほかは何も見せない」というのもとても興味深い状況です。一般的には「心」が一番表に出しにくいものであるのですが、この歌の場合「心」は見せているのです。けれどもそのほかは何も見せていないのです。
表情も読み取れませんが、それが却って「心」の存在を増幅させ、こちらに迫ってくるような印象のある一首です。