問題 – Question
〈三月の真っただ中を落ちてゆく雲雀、あるいは光の溺死〉という巻頭歌で始まる、服部真里子の第一歌集は何?
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解答 – Answer
『行け広野へと』
解説
『行け広野へと』は2014年に出版された、服部真里子の第一歌集です。歌壇賞受賞作「湖と引力」を含む289首が収められています。期間としては19歳から27歳までにつくられた歌の数々です。
巻頭歌〈三月の真っただ中を落ちてゆく雲雀、あるいは光の溺死〉からも窺うことができますが、服部真里子の歌はどこか「光」「明るさ」のイメージを伴ったものが多いと感じます。ただしそれらは、純粋に肯定的な輝かしい光のイメージではなく、死や消滅といったものが直前に放つ、どちらかといえば負のイメージを背景に抱えこんだ光の輝きです。
明るく輝かしいはずなのに、その光が明るければ明るいほど、反対にさびしさやかなしさをより一層感じてしまうのです。この振れ幅の大きさを感じる歌に魅力がある一冊です。
第21回日本歌人クラブ新人賞、第59回現代歌人協会賞受賞。早稲田短歌会出身。
『行け広野へと』から五首
人の手を払って降りる踊り場はこんなにも明るい展翅板
なにげなく摑んだ指に冷たくて手すりを夏の骨と思えり
春だねと言えば名前を呼ばれたと思った犬が近寄ってくる
どの町にも海抜がありわたくしが選ばずに来たすべてのものよ
湖と君のさびしさ引きあって水面に百日紅散るばかり