青空に浮かぶ無数のビー玉のひとつひとつに地軸あるべし
山田航『さよならバグ・チルドレン』
山田航の第一歌集『さよならバグ・チルドレン』(2012年)に収められた一首です。
ここで詠われている「ビー玉」は、実際のものとしてのビー玉ではなく、空に浮かぶ星々の喩えとしてのビー玉だと思います。
模様の入ったきれいなビー玉のイメージが、美しい星の姿を想像させてくれるのではないでしょうか。
地球を含めた太陽系の惑星や、衛星のような星の数々が、銀河系はてはさらに遠くの宇宙には「無数」に存在していることでしょう。
「青空に浮かぶ」とあることから、無数のビー玉を想像しているのは、夜ではなく、日中でしょう。日中に無数の星は見えませんが、見えない分、むしろ日中の方が無数の星を想像するのに適しているようにも思います。夜空であれば、星が出ているとどうしてもそれらの星の光を目で見てしまい、無数のビー玉のイメージと結びつきにくくなってしまうのではないでしょうか。ここでは「青空」であることも、重要なポイントだと感じます。
さて、そんな無数の星々ですが、それらを「無数」という一括りで終わらせるのではなく、無数のうちのひとつひとつに注目しているところが特徴的だと思います。
地球に地軸があるのと同じように、名も知らない星にも、そのそれぞれには地軸があるだろうと詠われています。このように詠われることによって、無数として括られていた星々のひとつひとつが存在感をもちはじめるような気がしてきます。
無数でありながら、ひとつひとつに注目していることによる一個の際立ち、それらが同時に成立しているといえるのではないでしょうか。ここに、この歌のスケールの大きさと、ひとつひとつの星の存在感が表現されており、印象に残る一首です。